2012年02月21日
94年5月号アニメージュのVガンダム特集・その1
先々月、アニメージュ93年6月号で行われた富野由悠季監督と押井守監督の対談からVガンダムを検証する作業をしてみたのですが、他にもVガンダムで面白そうな記事が出てきたので取り上げて見たいと思います。今回は同じくアニメージュの94年5月号の「今だから語ろう![Vガンダム]のおもしろさを」になります。後にVガンダム旧DVD−BOXに付録として付いてきた合計324Pもの解説本を編集することになる斉藤良一さんが執筆、そして「エヴァンゲリオン」の庵野秀明監督、「少女革命ウテナ」「輪るピングドラム」の幾原邦彦監督へのインタビューで構成されています。まずは斉藤さんによる「Vガンダムはどう見られていたのか?」です。これはVガンダムの視聴者層についてバンダイビジュアルの方に取材しています。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「Vガンダム」は元々、リアルロボット物としての『ガンダム』を知らない『SDガンダム』世代をターゲットに、スタートした企画だった。『SDガンダム』を卒業子どもたちに、1作目のような、リアルタイプ『ガンダム』をぶつけてみようというのである。ではその結果はどうだったか?残念ながら視聴者はあまりよくなかったし、AM(注)誌上での反応も期待したほどではなかった。しかし人気がなかったのか、といえばそんなことはない。『ニュータイプ』誌上では常に人気作品だったと聞くし、バンダイから出ているTVシリーズのビデオソフトも順調に売れているようだ。ではどのような層が『Vガンダム』を支持していたのだろうか?バンダイビジュアルの高梨実さんに聞いてみた。
「ビデオグラム(注)はVTR・LDあわせて、各巻平均で1万5千本くらい売れています。通常、TVシリーズをソフト化したものとしては、例えば『アイアンリーガー』(注)などでも4千本くらいですから、かなりいい数字ですね」
AM:アニメージュ
ビデオグラム:販売用に製作されたソフトパッケージの総称
アイアンリーガ:「疾風!アイアンリーガ−」の事。Vガンダムと同じく93年〜94年にテレビ放映されたサンライズ製作のロボットアニメ
アンケートによれば購買層の中心は20代前半の男性。ちょうど中学生の頃に『Zガンダム』『ガンダムZZ』を見ていた世代だ。ちなみに“ガチャポン”のガンダムが発売され、“SDガンダム”の商品展開が始まったのが『ZZ』の放映中だから、SD世代とはわずかにズレている、レンタル向けに行ったキャンペーンのプレゼントでも、応募は小さい子どもか、20代で、SD世代に入る現在の中高生からの反応は少なかったとか。では『Z』世代は『V』に何を求めているのか?
「購入の動機でいちばん多いのは、やはり“富野監督の作品だから”というものですね」というのは『Vガンダム』を担当する寺田将人さん、特にキャラクターやMSが熱狂的に支持されているわけでもない。富野作品に慣れ親しんできた世代が“富野ブランド”として支持している部分が多いのでは?と寺田さん。逆にいえば“富野アニメ”の洗礼を受けることのなかった若い世代には、理屈っぽい『Vガンダム』がなじめなかったのかもしれない。アニメージュ本誌によるアンケートでも『Vガンダム』の支持層は、読者の中心が14〜16歳(男女比は半々)に対して、18〜20歳(男性中心)がピークで、やはり高目となっている。
かつて最初の『ガンダム』のヒットの後、その影響を受けて、作品のテーマ性やドラマ性を重視した、いわゆるリアルロボット物が輩出した時代があった。しかしブームは去り、娯楽第一主義の作品があふれる現在『Vガンダム』のような作品は、ことにテレビでは、他に皆無といっていい。一見して時代に取り残されたかにもみえるが、はたしてそうなのだろうか?『Vガンダム』には他では決して見出せない、真剣な“おもしろさ"がある。それをこれから検証してみたい。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
今はどうか解りませんが、当時(93年〜94年)のアニメージュという雑誌は「アニメを知ってもう少し先の世界を知りたくなった」層、記事にもあるとおり中学生くらいが中心だった記憶があります。ただ「男女比は半々」とありますが実際の所「女性6の男性4」くらいだったのでは?対して角川書店の「ニュータイプ」はもう少し上の層、高校生や大学生の男性が読者層だったと思います。「Vガンダム」が「アニメージュ」でウケが悪く、「ニュータイプ」で良かったのは当然…なんでしょうね。
ありがたいことに93年から94年までのアニメージュがほぼ残っているので、ここから読者による「ベスト10キャラランキング」を見てみたいと思います(ベスト10なんだけど30位までカウントしているのは何故…)。ちょっと意地の悪い比較になるかもしれませんが同時期に放映されていたサンライズ製作の「勇者特急マイトガイン」の旋風寺舞人のランキングもあわせて紹介します。
1993年6月号 ウッソ圏外 旋風寺10位(134票)
1993年7月号 ウッソ圏外 旋風寺15位(94票)
1993年8月号 ウッソ圏外 旋風寺15位(89票)
1993年9月号 ウッソ圏外 旋風寺15位(86票)
1993年10月号 ウッソ圏外 旋風寺15位(85票)
1993年12月号 ウッソ23位(53票) 旋風寺10位(149票)
1994年1月号 ウッソ28位(48票) 旋風寺18位(85票)
1994年3月号 ウッソ25位(45票) 旋風寺19位(84票)
1994年4月号 ウッソ26位(46票) 旋風寺22位(61票)
1994年5月号 ウッソ20位(89票) 旋風寺30位(37票)(注:この号はVガンダム最終回を迎えての結果だと思われます)
1994年6月号 ウッソ23位(80票) 旋風寺圏外
一部欠番があるのが残念ですが、これを見るといかにVガンダムがアニメージュの読者層に序盤、ウケが悪かったことが解りますね(苦笑)。ただどういう訳か93年12月号(実質10月頃か?)からウッソに45票前後、集まりだしているんですよねぇ。これはウッソというよりようやく出来たVガンダムファンによる組織票と見るべきなのでしょうか?ただ票が集まりだしたと言っても一番票の多い94年5月号でもトータル3884票あるうちの89票なので2.3%程度の支持なんですが…。
斉藤さんの文からかけ離れてしまったので戻しますが、この文の中の「Z世代がVガンを支持している」的な表現は、放送終了して間もない時期であるとしてもちょっと間違っている気がします。文章として解りやすく「Z世代」という枠を作りたかったというのは理解できるのですが、富野アニメの洗礼を受けていないからこそVガンダムにはまった人もいる感触が僕にはありますし、Zが好きでもVガン嫌いになる可能性は大いにあり得るので(苦笑)ちょっとこの枠のはめ方は無理があるような。たまたまVガンダムの支持層が「Z世代」と言われる年齢層と一致しただけじゃないかと思うのですが。
しかし「キャラクターやMSが熱狂的に支持されているわけではない」のにビデオの販売が好調だったという証言には注目しなければならないですね。富野さんがガンダムシリーズのフォーマットは使いつつも、ガンプラ等を購入する従来のガンダムファンではなくそれ以外のお客さんを狙っていた事がきちんと結果として出た話だと思います。
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「Vガンダム」は元々、リアルロボット物としての『ガンダム』を知らない『SDガンダム』世代をターゲットに、スタートした企画だった。『SDガンダム』を卒業子どもたちに、1作目のような、リアルタイプ『ガンダム』をぶつけてみようというのである。ではその結果はどうだったか?残念ながら視聴者はあまりよくなかったし、AM(注)誌上での反応も期待したほどではなかった。しかし人気がなかったのか、といえばそんなことはない。『ニュータイプ』誌上では常に人気作品だったと聞くし、バンダイから出ているTVシリーズのビデオソフトも順調に売れているようだ。ではどのような層が『Vガンダム』を支持していたのだろうか?バンダイビジュアルの高梨実さんに聞いてみた。
「ビデオグラム(注)はVTR・LDあわせて、各巻平均で1万5千本くらい売れています。通常、TVシリーズをソフト化したものとしては、例えば『アイアンリーガー』(注)などでも4千本くらいですから、かなりいい数字ですね」
AM:アニメージュ
ビデオグラム:販売用に製作されたソフトパッケージの総称
アイアンリーガ:「疾風!アイアンリーガ−」の事。Vガンダムと同じく93年〜94年にテレビ放映されたサンライズ製作のロボットアニメ
アンケートによれば購買層の中心は20代前半の男性。ちょうど中学生の頃に『Zガンダム』『ガンダムZZ』を見ていた世代だ。ちなみに“ガチャポン”のガンダムが発売され、“SDガンダム”の商品展開が始まったのが『ZZ』の放映中だから、SD世代とはわずかにズレている、レンタル向けに行ったキャンペーンのプレゼントでも、応募は小さい子どもか、20代で、SD世代に入る現在の中高生からの反応は少なかったとか。では『Z』世代は『V』に何を求めているのか?
「購入の動機でいちばん多いのは、やはり“富野監督の作品だから”というものですね」というのは『Vガンダム』を担当する寺田将人さん、特にキャラクターやMSが熱狂的に支持されているわけでもない。富野作品に慣れ親しんできた世代が“富野ブランド”として支持している部分が多いのでは?と寺田さん。逆にいえば“富野アニメ”の洗礼を受けることのなかった若い世代には、理屈っぽい『Vガンダム』がなじめなかったのかもしれない。アニメージュ本誌によるアンケートでも『Vガンダム』の支持層は、読者の中心が14〜16歳(男女比は半々)に対して、18〜20歳(男性中心)がピークで、やはり高目となっている。
かつて最初の『ガンダム』のヒットの後、その影響を受けて、作品のテーマ性やドラマ性を重視した、いわゆるリアルロボット物が輩出した時代があった。しかしブームは去り、娯楽第一主義の作品があふれる現在『Vガンダム』のような作品は、ことにテレビでは、他に皆無といっていい。一見して時代に取り残されたかにもみえるが、はたしてそうなのだろうか?『Vガンダム』には他では決して見出せない、真剣な“おもしろさ"がある。それをこれから検証してみたい。
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今はどうか解りませんが、当時(93年〜94年)のアニメージュという雑誌は「アニメを知ってもう少し先の世界を知りたくなった」層、記事にもあるとおり中学生くらいが中心だった記憶があります。ただ「男女比は半々」とありますが実際の所「女性6の男性4」くらいだったのでは?対して角川書店の「ニュータイプ」はもう少し上の層、高校生や大学生の男性が読者層だったと思います。「Vガンダム」が「アニメージュ」でウケが悪く、「ニュータイプ」で良かったのは当然…なんでしょうね。
ありがたいことに93年から94年までのアニメージュがほぼ残っているので、ここから読者による「ベスト10キャラランキング」を見てみたいと思います(ベスト10なんだけど30位までカウントしているのは何故…)。ちょっと意地の悪い比較になるかもしれませんが同時期に放映されていたサンライズ製作の「勇者特急マイトガイン」の旋風寺舞人のランキングもあわせて紹介します。
1993年6月号 ウッソ圏外 旋風寺10位(134票)
1993年7月号 ウッソ圏外 旋風寺15位(94票)
1993年8月号 ウッソ圏外 旋風寺15位(89票)
1993年9月号 ウッソ圏外 旋風寺15位(86票)
1993年10月号 ウッソ圏外 旋風寺15位(85票)
1993年12月号 ウッソ23位(53票) 旋風寺10位(149票)
1994年1月号 ウッソ28位(48票) 旋風寺18位(85票)
1994年3月号 ウッソ25位(45票) 旋風寺19位(84票)
1994年4月号 ウッソ26位(46票) 旋風寺22位(61票)
1994年5月号 ウッソ20位(89票) 旋風寺30位(37票)(注:この号はVガンダム最終回を迎えての結果だと思われます)
1994年6月号 ウッソ23位(80票) 旋風寺圏外
一部欠番があるのが残念ですが、これを見るといかにVガンダムがアニメージュの読者層に序盤、ウケが悪かったことが解りますね(苦笑)。ただどういう訳か93年12月号(実質10月頃か?)からウッソに45票前後、集まりだしているんですよねぇ。これはウッソというよりようやく出来たVガンダムファンによる組織票と見るべきなのでしょうか?ただ票が集まりだしたと言っても一番票の多い94年5月号でもトータル3884票あるうちの89票なので2.3%程度の支持なんですが…。
斉藤さんの文からかけ離れてしまったので戻しますが、この文の中の「Z世代がVガンを支持している」的な表現は、放送終了して間もない時期であるとしてもちょっと間違っている気がします。文章として解りやすく「Z世代」という枠を作りたかったというのは理解できるのですが、富野アニメの洗礼を受けていないからこそVガンダムにはまった人もいる感触が僕にはありますし、Zが好きでもVガン嫌いになる可能性は大いにあり得るので(苦笑)ちょっとこの枠のはめ方は無理があるような。たまたまVガンダムの支持層が「Z世代」と言われる年齢層と一致しただけじゃないかと思うのですが。
しかし「キャラクターやMSが熱狂的に支持されているわけではない」のにビデオの販売が好調だったという証言には注目しなければならないですね。富野さんがガンダムシリーズのフォーマットは使いつつも、ガンプラ等を購入する従来のガンダムファンではなくそれ以外のお客さんを狙っていた事がきちんと結果として出た話だと思います。
Posted by 天野"kevin"達也 at 00:05│Comments(0)
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